顧客の現場担当者とプロジェクトを順調に進めていたのに、終盤になって顧客の偉い人が出てきて、
「思っていたのと違うなあ」
の一言で、これまで積み上げてきたものを捨てて大きな手戻りになる・・・こんな経験ありませんか?
仕事系のドラマでもよくあるこんなシーン、インパクトの大小はあれど、誰しも経験していると思います。
この事態は、プロジェクト・エンゲージメント・マネジメントの不足が招いています!
本記事では、プロジェクト・エンゲージメント・マネジメントの立ち上げフェーズのプロセスである、プロジェクトホルダーの特定について説明します。
「ステークホルダーの特定」プロセス
ステークホルダーの特定プロセスについて、PMBOKの説明を見てみましょう。
ステークホルダーの特定は、プロジェクトのステークホルダーを定期的に特定し、プロジェクト成功への関心事、関与、相互依存、影響、および潜在的影響に関連する情報を分析し、文書化するプロセスである。このプロセスの主な利点は、プロジェクト・チームが各ステークホルダーやステークホルダー・グループの関与への適切な配慮を認識できるようになることである。このプロセスは、必要に応じてプロジェクト全体を通して定期的に実行される。
つまり、本プロセスでプロジェクトに影響する人物について把握をしておくことで、後続プロセスでプロジェクト成功に向けてどのようなアクションを準備しておくかを考えておくことができるのです。
プロジェクトには往々にして、敵と味方がいます。
プロジェクトは基本的に、現在の状態から別の状態に変更することになりますので、現在の状態に満足している人や既得権益を持つ人はプロジェクトに対してネガティブな姿勢であったり反抗的な行動を取ったりする場合があります。
その傾向と度合いは人によって異なるので、ステークホルダーの特定プロセスで人々の立ち位置を明確にするのです。
ITTO
ステークホルダーの特定プロセスのITTO (インプット・ツールと技法・アウトプット)を確認します。
本プロセスで特に着目したほうが良いものを太字にしています。
インプット
- プロジェクト憲章
- ビジネス文書
- ビジネスケース
- ベネフィット・マネジメント計画書
- プロジェクトマネジメント計画書
- コミュニケーション・マネジメント計画書
- ステークホルダー・エンゲージメント計画書
- プロジェクト文書
- 変更ログ
- 課題ログ
- 要求事項文書
- 合意書
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
合意書で合意した当事者がまさにステークホルダーです。
また、ステークホルダー・エンゲージメントの計画プロセスのアウトプットがステークホルダー・エンゲージメント計画書として、本プロセスのインプットになります。
ツールと技法
- 専門家の判断
- データ収集
- アンケート
- ブレインストーミング
- データ分析
- ステークホルダー分析
- 文書分析
- データ表現
- グリッド
- ステークホルダー・キューブ
- セイリエンスモデル
- 影響の方向性
- 優先順序付け
- 会議
ステークホルダー分析とデータ表現が本プロセスの最大の肝です。次の章でしっかり説明します。
アウトプット
- ステークホルダー登録簿
- 変更要求
- プロジェクトマネジメント計画書更新版
- プロジェクト文書更新版
ステークホルダー登録簿に記載された人を対象に、ステークホルダーエンゲージメントのマネジメントや監視を行うことに注意してください。
もし、ステークホルダー登録簿にない人物に対して、ステークホルダーエンゲージメントのマネジメントや監視を実施する必要が出てきた場合は、本プロセスを再度実行し、ステークホルダー登録簿を更新する必要があります。
ステークホルダー分析とデータ表現
本プロセスの最大のポイントであるステークホルダー分析とデータ表現について説明します。
ステークホルダー分析
収集したステークホルダーに関する情報を整理し、分類・評価する方法です。
分類では、プロジェクトにおける役割・組織内での立場・利害関係・期待・関心・態度などの情報を軸に分類を行います。PMBOKでは利害関係として以下の組み合わせが示されています。
- 利益
- 権利
- 所有権
- 知識
- 貢献
データ表現
グリッド
分類結果はデータ表現されますが、代表的なものがグリッドです。
権力と関心度のグリッド、権力と関与度のグリッド、影響度と関与度のグリッドがあります。
権力と関心度のグリッドでは、次のような2軸マトリックスで表現されます。
ステークホルダー・キューブ
ステークホルダーキューブは、グリッドの改良版で、3要素を3次元で表現したものです。
セイリエンス・モデル
セイリエンス・モデル(突出モデル)は、権力・緊急性・正当性の3軸評価に基づいて分類結果を説明したものです。
影響の方向性
プロジェクト作業またはプロジェクトチームに及ぼす影響力に応じて分類します。具体的には以下の4つの方法があります。
- 上向き(実行組織または顧客組織の上級経営層、スポンサー、運営委員会)
- 下向き(知識やスキルを提供する有期的なチームや専門家)
- 外向き(サプライヤー、政府部門、一般、エンドユーザー、規制当局などのプロジェクト・チーム外のステークホルダーグループと代表者)
- 横向き(プロジェクト資源や情報の共有で協業したり、資源で競合したりする、他のプロジェクトマネージャーや同僚)
PMP試験におけるポイント
ステークホルダーの特定は、PMP試験でも出題されるポイントです。
筆者が受験した時もステークホルダーの特定プロセスに関する問題は出題されていました。
数少ない暗記問題が出たのもこのプロセスです。
また、暗記問題だけでなく、ケース問題についても本記事で記載したポイントを押さえれば得点源になりますので、しっかり理解を深めてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。