近年PMという職種への注目度が高まってきています。仕事におけるPMの役割が重要という理解が進んできたためですが、人によって"PM"が指すものが違う場合があります。
この記事では、PMとはどのような職種で、必要なスキルは何かについて説明します。
PMは2つの職種がある
IT業界において、"PM"という職種が指すものは主に2つあります。
- プロジェクトマネージャー (Project Manager, PjMと略す場合もある)
- プロダクトマネージャー (Product Manager, PdMと略す場合もある)
字面は似ていますが、仕事の内容は全く異なります。
それぞれの職種について見ていきましょう。
(IT業界以外だと、不動産や投資における"プロパティマネジメント"をPMと略す場合がありますが、本記事では割愛します。)
プロジェクトマネージャーという職種について
プロジェクトマネージャーの役割
プロジェクトマネージャーの役割は、「プロジェクトの目標を達成するために、プロジェクトチームをリードする」ことです。
プロジェクトマネジメントの体系をまとめたPMBOKでは、以下のように定義されています。
プロジェクト・マネジャーの役割は、機能部門マネジャーや定常業務マネジャーの役割とは異なる。通常、機能部門マネジャーは機能部門や事業部門を管理監督することを重視する。定常業務マネジャーは、業務を効率的に進める責任を負う。プロジェクト・マネジャーは、プロジェクト目標を達成することに責任をもつチームをリードするために、母体組織が任命する人物である。
PMBOK第6版 P52 「3.2 プロジェクト・マネジャーの定義」より引用
つまり、人事権を持つピープルマネージャーとは違い、プロジェクトを成功させることに特化してマネジメントを行うのがプロジェクトマネージャーです。
プロジェクトマネージャーに必要なスキル
プロジェクトマネージャーとして成果を出すために必要なスキルは多岐にわたります。
- プロジェクトの範囲(スコープ)をハンドリングする技術
- プロジェクトのスケジュールをハンドリングする技術
- プロジェクトのコストをハンドリングする技術
- プロジェクト成果物の品質を管理する技術
- プロジェクト運営に必要なリソース(物資だけでなくプロジェクトメンバーも含む)を管理する技術
- プロジェクトを円滑に進めるための、プロジェクト内外とのコミュニケーションスキル
- プロジェクトに発生しうるリスクを把握し状況に対処する技術
- プロジェクトを実施するために必要な受発注を管理する技術
- プロジェクトに関係するステークホルダー間の調整を円滑に行う技術
業務の幅が非常に広いことがわかるかと思います。これらのスキルを体系的にまとめたものが、PMBOKです。PMBOKではこれらを10の知識エリアと49のプロセスとして分類しています。
10の知識エリアと49のプロセスの詳細は、こちらの記事をご覧ください。
【PMP】合格のために覚えるべき49のプロセス(第6版)
PMBOKは、プロジェクトに関わる人すべてが目を通しておくことをお勧めします。PMI会員は無料でPMBOKを入手することができます。(方法はこちらの記事をご覧ください。)
また、PMBOKはAmazonで購入することもできます。
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOKガイド 第6版(日本語)
プロジェクトマネージャー資格
プロジェクトマネージャー職種の能力を認定する資格は、主に2つあります。
PMP試験・・・米国PMIが主催する認定資格で、国際的に認められている。名刺にも書ける。3年ごとの更新が必要。
プロジェクトマネージャー試験・・・独立行政法人情報処理推進機構が主催する認定資格で、国内での知名度は高い。受験機会は1年に1回しかないが、一度取得すれば更新などの手続きは必要ない。
詳しくは別記事 プロジェクトマネジメントに関する資格 にまとめているので、あわせてご確認ください。
プロジェクトマネージャーの待遇
必要なスキルが多岐にわたるプロジェクトマネージャーは、待遇も比較的良いです。
年収中央値で700万円(ボーナスを入れると930万円)です。
詳しくはこちらの記事にまとめていますが、プロジェクトマネージャー職自体も給料は他のIT職種に比べて高いですし、PMP資格を取るとさらに上がります。
PMPで給料は上がるのか?PMP資格者の給与水準の公開
プロジェクトマネージャーになるには
プロジェクトマネージャーになるためには、特別なことはありません。先述の資格も、プロジェクトマネージャーになるために取得する資格というよりも、すでにプロジェクトマネージャーとして働いている人がスキルを証明するために取得する側面が強いです。
プロジェクトマネージャーへのキャリアパスとしては、システムエンジニア(SE)として働いて経験を積んだ後、ステップアップとしてプロジェクトマネージャーに進む場合が多いです。
社内での昇進でプロジェクトマネージャーになる場合もあれば、SEからプロジェクトマネージャーへの転職という形でキャリアアップを実現する場合もあります。筆者もこのパターンでした。
転職でプロジェクトマネージャーになる場合には、エンジニアに特化した転職エージェントを活用するのがおすすめです。
まれに外資系企業ではSEやPjM未経験でもプロジェクトマネージャーになれる場合がある(この場合はたいていAssociate Project ManagerやJunior Project Managerといった低めの職位で入社して経験を積むことになります)ので、広くエージェントに相談するとよいでしょう。
プロダクトマネージャーという職種について
プロダクトマネージャーの役割
プロダクトマネージャーの役割は、「プロダクトを成功に導くためになんでもする」ことです。プロジェクトマネージャーは「プチCEO」と呼ばれることもあり、そのプロダクトを成功させるために必要なタスクをメンバーに振ったり、あるいは自ら行ったりします。
プロジェクトマネージャーに必要なスキル
プロダクトマネージャーに必要なスキルは、主に3つのカテゴリがあります。
- ビジネススキル(財務コントロール、マーケティング、プレゼンテーションなど)
- エンジニアリングスキル(プロダクト開発に必要なアーキテクチャやコーディング、DB設計など)
- クリエイティブスキル(プロダクトデザイン、UI/UXリサーチなど)
これらの3つのカテゴリのスキルがプロダクトマネージャーには必要になります。とはいえ、それぞれのカテゴリがカバーする領域が広すぎるため、実際には自分の経験してきた領域や得意な領域から徐々に広げていくことになります。
プロダクトマネージャー資格
プロダクトマネージャーの認定資格はありません。プロダクト全般を担う職種のため、能力を一般化して測ることがそもそも適していないと思われます。社長という仕事に資格試験がないのと同様です。
実際に稼働するプロダクトを作り成功させることがプロダクトマネージャーの力量を示すことにつながります。
プロダクトマネージャー職の市場ニーズは高まっている
プロダクトマネージャー職の日本での給与の統計的な情報はまだありません。
海外を見ると、glassdoorによると、プロダクトマネージャー職のベースサラリー(ボーナスを除いた給料)は、平均で$109,000です。日本円で約1200万円となります。さらにボーナスなど追加支給が$4,000~$32,000ほどとなります。
同じくglassdoorでソフトウェアエンジニアの給料を見てみると、ベースサラリーは$92,000、ボーナスなどの追加支給が$1,800~$20,500ですので、プロダクトマネージャー職が比較的良い待遇で働けることがわかります。
日本でもプログラマーに比べて希少な人材となるため、高待遇で働けることは間違いないでしょう。
プロダクトマネージャーになるには
プロダクトマネージャーになるために資格などは必要ないので、必要なスキルを身につけ、実際に業務に飛び込むことでプロダクトマネージャーになれます。
必要なスキルの概要は前述のとおりですが、より具体的に身につけるべきスキルについては、こちらの本が良くまとまっています。(おそらく全プロダクトマネージャーが読んでいるはずです。)
INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント
オンラインのeラーニングで学ぶ場合は、以下のコースがおすすめです。筆者も受講しましたが、シリコンバレーで実際にプロダクトマネージャーとして働かれている方の経験に基づく情報であり、かつ現在のキャリアからプロダクトマネージャーになるまでの道筋がパターンごとに説明されているため、非常に勉強になりました。
プロダクトマネジメント入門講座:作るなら最初から世界を目指せ!シリコンバレー流Product Management
実践編もあります。
PM比較まとめ
最後に、本記事で説明した2つのPMの比較を表にまとめます。
プロジェクトマネージャー(PjM) | プロダクトマネージャー(PdM) | |
役割 | プロジェクト目標の達成のためにチームをリードする | プロダクトの成功のためになんでもする |
スキル | スケジュールやコスト、品質など10の知識エリアと49のプロセス | ビジネススキル エンジニアリングスキル クリエイティブスキル |
資格 | 主に2つ PMP プロジェクトマネージャー試験 | なし |
なるには | 資格制限はないので、プロジェクトマネージャーの役割の業務経験を積む | 資格制限はないので、プロダクトマネージャーに必要なスキルが身につく業務経験を積む |
さいごに
本記事ではPMという略語のため混同しがちなプロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーのそれぞれの役割とスキルについて説明しました。
筆者はどちらの職種も経験がありますが、どちらも大変だがやりがいのある仕事内容でした。
本記事を読んで、"PM"として活躍される方が増えることを祈っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。